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あべこべ物語(1932?)その2

映画「転校生」にすり替えられた元祖の地位
前回述べたように、『あべこべ物語』は日本における「入れ替わり」というテーマを扱った作品の元祖であるといえよう。しかし、この作品が、今の「入れ替わり」を扱った作品に直接、影響をもたらしているとするのは考えすぎだと思われる。これには二つの理由がある。一つは、今後の研究によってはこれよりも古い作品を発掘する可能性もあること、もう一つは現在この作品が、もはや完全に忘れ去られているといっても過言ではないほど話題にのぼることがほとんどないことである。

『大林宣彦の映画談議大全《転校生》読本』(角川学芸出版 2008年)によると、大林宣彦監督自身もこの作品を子どもの頃に読んだという。読んだのはおそらく、『ユーモア艦隊』、もしくは1948年に刊行された湘南書房版『あべこべ玉』だと思われるが、作品の詳細については記載されていないのが惜しまれる。『転校生』公開以後、似た内容やテーマの作品がフィクションにおいて数多く登場しているにもかかわらず、引き合いに出されることはめったにない。

今のところ、この作品の最も新しい版は1982年12月に刊行された青い鳥文庫版である。この版の売れ行きは悪かったのだろうか、初版のみで絶版となったようでその後は刊行されていない。1982年といえば、大林宣彦監督の映画『転校生』が公開された年であり、その因果関係ははっきりしないものの、この作品が少なからず影響を及ぼしたものと考えられる。

かつて、『サトウハチローユーモア小説選』という作品集が岩崎書店から刊行されたことからもわかるように、1973年にサトウハチローが没して以後、彼の様々な分野における作品の評価が行われてきた中で、この作品が刊行されたのだと思われる。けれども今、彼が童謡や詩だけでなく、小説の分野でも活躍していたことを知る人は少ない。もちろん、これらの本も1990年代初頭までには絶版となり、今では古書店や図書館でないと見つけることができない。(注:『サトウハチローユーモア小説選』のうち、一部は岩崎書店のフォア文庫からも刊行された)。

軽いタッチのコメディーと性や相互理解など、さまざまな要素を盛り込んだ作品、どちらが人々から高い評価を得るかは明らかである。その結果、半世紀近くにわたって(断続的とはいえるだろうが)読まれてきた『あべこべ物語』はついに『転校生』の前に敗れたのだ。
最も新しい講談社青い鳥文庫版の刊行からでも四半世紀を経た今、この作品を読むことは困難である。戦前に刊行された『ユーモア艦隊』はもはや稀覯本となり、少年少女講談社文庫版、青い鳥文庫版でさえも古書店ですらなかなか見かけなくなってしまった。

ほかのジャンルにおける「元祖」のなかには、H・G・ウェルズの『タイムマシン』や『宇宙戦争』『透明人間』のように、不朽の名作として揺るがぬ地位を得ているものが多い。けれども、そこに『あべこべ物語』の姿はない。現在「入れ替わり」というテーマの元祖は『転校生』あるいはその原作の『おれがあいつであいつがおれで』ということになっている。確かに、現在の作品に影響を与えた直接的な元祖としては、この2作品がふさわしいであろう。けれども、その点だけに注目してしまうと、『転校生』以前の作品たち、つまり「前史」があったことを忘れされられてしまう。その点において『転校生』は『あべこべ物語』というもう一つの元祖を葬り去ってしまったということもできよう。

今、真の「元祖」は図書館や古書店の本棚で深い眠りについている。だが、それを手に取らずして、『転校生』以後の作品について本当の意味で語ることはできないであろう。

次に紹介する作品もまた、『転校生』以前の「入れ替わり」フィクションを語る上で重要な作品である。この作品も長い眠りについていたが、最近になって再びよみがえることができたものである。

それが光瀬龍の『あばよ!明日の由紀』(1969年)である。
次回はこの作品について語ることにしよう。

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「ありえる”かもしれない”未来~入れ替わりがもし本当にできたら~」を掲載しているウラックマです。この第2ブログの内容は、「入れ替わり」を扱った作品についての紹介と分析です。

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